介護施設がデジタル化を促進するための押さえておくべきツールとは?
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ここでは、介護施設がデジタル化を促進する必要がある理由と、そのためにどのようなツールを押さえておくべきか、簡単に説明をさせていただきます。
1. 人口推計
国立社会保障・人口問題研究所が公表した「日本の将来推計人口(平成29年推計)」※1によると、2015年に1億2,709万人であった日本の総人口は、以後減少過程に入り、2040年には1億1,092万人になると推計されています。
このうち、介護を受ける側として想定される老年(65歳以上)人口は、2015年の3,387万人から、2042年に3,935万人へと増加し、ピークを迎えます。
老年人口割合は、2015年は26.6%で4人に1人を上回る状態でしたが、2036年には33.3%で3人に1人となります。
一方、介護をする側として想定される生産年齢(15~64歳)人口は、1995年には8,726万人に達しましたが、その後減少に転じ、2040年には6,000万人を割ります。
生産年齢人口割合は、2015年には60.8%であったものが、2065年に51.4%になります。
なお、上記の数字は、同推計の出生推移、死亡推移についてそれぞれ中位の仮定に基づいたものを使用しています。
※1国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」
https://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2017/pp29_ReportALL.pdf
2. 介護に携わる人材の確保が困難に
国立社会保障・人口問題研究所のデータを用いて作成したグラフを示します。
(参照データ:国立社会保障・人口問題研究所「表1-1 総数,年齢3区分(0~14歳,15~64歳,65歳以上)別総人口及び年齢構造係数:出生中位(死亡中位)推計」より抜粋
https://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2017/db_zenkoku2017/s_tables/1-1.htm)
2040年ごろまでは、老年人口は増加し、生産年齢人口は減少すると推計されています。また、それ以後は老年人口も減少に転じますが、しばらくの間、老年人口に対する生産年齢人口の割合は減少します。したがって、今後は、介護の需要が増加する半面、介護に携わる人材の確保は困難になるでしょう。
3. どのようにして介護の質を向上させるか
このような状況下において、どのようにして介護の質を維持、向上させていけばよいのでしょうか。少ない人数でも介護の質を高めるためには、介護以外の業務にかかる手間と時間を削減し、かつ、介護業務そのものも効率化を図る必要があります。より優先度が高い業務に、リソースを集中させる必要があるからです。デジタル化は、それを実現するための有効な手段の一つで、介護職員だけでなく、利用者や管理者にとってもメリットとなり得るものなのです。
では、介護施設が、デジタル化を促進するために押さえておくべきデジタルツールとは、どのようなものなのでしょうか。
4. 押さえておくべきデジタルツール
①入力支援ツール
日々の業務において、介護記録や日誌、連絡帳など、記録が必要なものはたくさんあるのではないでしょうか。これらは、手書きの方が早いものもあるでしょうが、スマートフォンやタブレットPCを活用すれば、チェック方式などのシンプルな操作で入力することが可能です。また、音声入力機能を装備したアプリケーションを利用すれば、さらに省力化が可能になるでしょう。
入力支援ツールを導入することにより、事務作業が効率化、省力化されます。それにより、介護業務の品質向上に注力することが可能になります。また、紙の文書では保管のスペースを多く必要としますが、デジタル化によってこれを縮小することが可能です。紙代や印刷コストも削減できるでしょう。
②一括管理システム
個々の文書を管理するという面から考えた場合、アナログ文書のデジタル化は、文書作成という点では効率化するかもしれませんが、それ自体は単なる作業の置き換えにすぎません。場合によっては、管理面での効率は悪化するかもしれません。より高いレベルで効率化を図るためには、デジタル化された文書を一括管理するためのシステムを導入することが有効です。
社内に存在するあらゆるデータを共通のシステムで作成・管理できれば、複数のソフトウェアを使用する必要がなく、また、異なるソフトウェアで作成されたデータの互換性なども、気にする必要がなくなります。別の文書を見ながら手入力をする必要もないので、打ち間違いによるミスを防ぐこともできます。
職員がある作業を行った際に、それを一括管理システム上の端末で記録したとします。まず、入力作業が簡便化されていれば、職員の負担は減ります。また、この時記録された、誰が誰に何をどのくらいの時間行って、その際何をどの程度使用した、などといったデータが瞬時に他の職員に共有できれば、それに付随する作業、例えば人員配置や発注作業などを効率化できます。これは、人事労務管理や受発注管理などを行う職員にとってメリットです。こうして現場の職員や管理者の負担が減った結果、その人たちは、より多くの時間と労力を介護業務の品質向上に割り当てることができます。これは、利用者にとってメリットとなります。
5. まとめ
デジタル化にはメリットも、もちろんデメリットもあります。メリットとしては、業務の効率化、高品質化、省力化、省スペース、コストの削減、などが考えられます。また、デジタルデータは、複製や加工が容易です。反面、デジタルデータは、アナログの文書に比べて、極めて容易に消失します。また、作業によっては、デジタル化しない方が効率の良いものはあるでしょうし、一括管理システムなどは、初期導入費用が高額になってしまうケースがあります。
大事なのは、デジタル化そのものではなく、デジタル化によってどのようなメリットがもたらされるかです。本来それは、個々の組織によって個別に検討すべきものです。そういう意味では、本当に押さえておくべきツールとは、皆さんご自身が一番よくご存じなのかもしれません。
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